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数理工学研究室/研究紹介
久保田研究室で行っている,主な研究テーマは,
1.有機太陽電池の光制御技術
2.脳の数理モデル
です.どちらの研究も,プログラミング言語(C/C++, MATLAB等)を十分に習得した上で,数値シミュレーションを行います.現象を細かく解析するだけでなく,イメージを豊かにして,新しいモデルや解析手法を創り出していくことが大切です.

1.有機太陽電池の光制御技術
 太陽電池のコスト低減,フレキシブル化,軽量化を目指して,有機太陽電池の開発が近年盛んに行われています.有機太陽電池の発電効率を向上させる上で,非常に薄い(100 nm程度.1 nm = 10-9 m)発電層に光を閉じこめることを可能にする,優れた光制御技術の開発が強く期待されています.
 本研究では,有機太陽電池の光学シミュレーションを用いて光の流れを最適化することで,発電効率を改良するための新しい太陽電池システムの提案を行います.例えば,数100 nmの高さのミクロな円錐を並べたモスアイ反射防止構造の開発等を行っています.自分で設計した太陽電池・反射防止膜を実際に製作することもできます.設計からものづくりまでを経験することで,新たな課題を発見して,次の開発に活かすことが可能になります.


モスアイ構造(ナノテクスチャ)と多層干渉膜を組み合わせた有機太陽電池用ハイブリッド反射防止構造の最適設計.左:提案するハイブリッド反射防止構造と有機太陽電池の光学モデル.右:FDTD法のシミュレーションにより得られた太陽電池内部の電界分布.反射防止により,発電層のほぼ全領域で電界が強められて光吸収が促進されている.
S. Kubota, K. Kanomata, T. Suzuki, B. Ahmmad, & F. Hirose, Hybrid antireflection structure with moth eye and multilayer coating for organic photovoltaics, J Coat Technol Res, 12: 37-47, 2015.

  
P3HT/PCBM型有機太陽電池内部の光吸収分布の解析例.左:多層干渉膜を導入した有機太陽電池内部の光吸収分布(特性マトリクス法のシミュレーションによる).右:反射防止膜を導入することで,主に長波長での発電層の吸収エネルギーの増加が起きる.
S. Kubota, K. Kanomata, K. Momiyama, T. Suzuki, & F. Hirose, Robust design method of multilayer antireflection coating for organic solar cells, IEICE, E96-C: 604-611, 2013. (日本語論文はこちらから)

その他の研究例:
(1)ガラス基板を光が通過するデバイスへのFDTD法の適用とモスアイ構造の最適化
S. Kubota, K. Kanomata, B. Ahmmad, J. Mizuno, & F. Hirose, Optimized design of moth eye antireflection structure for organic photovoltaics, J Coat Technol Res, 13: 201-210, 2016.

S. Kubota, K. Kanomata, B. Ahmmad, J. Mizuno, & F. Hirose, FDTD analysis for light passing through glass substrate and its application to organic photovoltaics with moth eye antireflection coating, J Photopolym Sci Technol, 29: 209-214, 2016.

S. Kubota, K. Hiraga, K. Kanomata, B. Ahmmad, J. Mizuno, and F. Hirose, Efficient light trapping structures for organic photovoltaics fabricated by nanoimprint lithography, J Photopolym Sci Technol, 33: 103-109, 2020.

(2)ナノテクスチャと高屈折率ガラスを統合した有機太陽電池デバイスの設計及び評価実験
S. Kubota, Y. Harada, T. Sudo, K. Kanomata, B. Ahmmad, J. Mizuno, & F. Hirose, An integrated antireflection design using nanotexture and high-refractive-index glass for organic photovoltaics, J Coat Technol Res, 14: 1209-1224, 2017.

2.脳の数理モデル
 生物が行っている優れた情報処理の仕組みを解明するために,様々な分野から,脳の実験・臨床研究が行われて,膨大なデータが集められています.これらの実験データをまとめて,その中から本当に役立つデータを抽出する,つまりデータの量を質に変換するための工学技術が必要になっています.
 また,脳内では,情報処理の機能単位として振る舞う神経細胞の数・種類が膨大であり,しかも,個々の神経活動の非線形性が非常に強いことが,現象の理解を困難にしています.そこで,神経の電気的活動を微分方程式を用いて記述して,シミュレーションにより現象を再現すると共に,数理的な解析を行うことが重要視されています.
 本研究では,神経の非線形ダイナミクスの観点から,神経生物学の実験データを説明するための数理モデルの構築と,そのために必要な解析技術の開発を行います.


視覚野眼優位可塑性の臨界期のタイミングが,抑制性神経伝達(GABA)によって制御されることを示したモデル.左:両眼からのシナプス入力とフィードバック抑制を受ける視覚野神経細胞モデル.中・右:単眼遮蔽を受ける際の,両眼からのシナプス入力強度の変化.臨界期には,シナプス荷重の双安定なダイナミクスにより,感覚入力の履歴をシナプス荷重に埋め込むことができる.
I. Sakurai, S. Kubota, & M. Niwano, The onset and closure of critical period plasticity regulated by feedforward inhibition, Neurocomputing 143, 261-268, 2014.

  
パーキンソン病に関連した大脳基底核のバースト振動のモデル.左:視床下核神経のコンパートメントモデルの膜電位応答.NMDA入力と過分極性電流が共存する時に,低周波数(<1 Hz)の強いバースト発火が誘発される.右:提案する3次元ヌルクライン法により,バースト発火が発生するための,非線形力学系としてのメカニズムを解析した例.
S. Kubota & J. Rubin, NMDA-induced burst firing in a model subthalamic nucleus neuron, J Neurophysiol, 106, 527-537, 2011. (日本語論文はこちらから)

その他の研究例:
(1)NMDAR・GABAの遺伝子発現が皮質神経回路の組織化に及ぼす影響
S. Kubota & T. Kitajima, A model for synpatic development regulated by NMDA receptor subunit expression, J Comput Neurosci 24, 1-20, 2008

I. Sakurai, S. Kubota, & M. Niwano, A model for ocular dominance plasticity controlled by feedforward and feedback inhibition, IEICE E97-A, 1780-1786, 2014

(2)神経活動フィードバックを伴うスパイクタイミング依存シナプス可塑性(STDP)のモデル
S. Kubota, J. Rubin, & T. Kiajima, Modulation of LTP/LTD balance in STDP by an activity-dependent feedback mechanism, Neural Networks 22, 527-535, 2009,

S. Kubota & T. Kitajima, Possible role of cooperative action of NMDA receptor and GABA function in developmental plasticity, J Comput Neurosci 28, 347-359, 2010

S. Kubota, Activity-dependent competition regulated by nonlinear interspike interaction in STDP: A model for visual cortical plasticity. Artif Life Robotics 17, 152-157, 2012

(3)神経場方程式の非線形解析
S. Kubota, K. Hamaguchi, & K. Aihara, Local excitation solutions in one-dimensional neural fields by external input stimuli. Neural Comput & Appl 18, 591-602, 2009

(4)パーキンソン病に関連した神経回路モデル
S. Kubota & J. E. Rubin, Numerical optimization of coordinated reset stimulation for desynchronizing neuronal network dynamics, J Comput Neurosci 45: 45-58, 2018.